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2022年度 雨漏り診断の調査統計
2022.12.27建築の現場から
雨漏り診断チームは2022年もたくさんの調査をしました。
雨漏り診断を専門とする調査チームが発足してから早数年、年間100件あまりの事例に立ち向かう中で調査能力や解決率は飛躍的に向上し、難しい案件の再発防止にも対応することができるようになりました。そこで今回は2022年度に調査を行った175件の統計データを発表いたします。
2022年度 雨漏り診断の調査統計
窓周りでの雨漏りが最多
雨漏りといえば屋根というイメージが多いと思いますが、実は窓周りで多く発生しています。昨年の統計データでも一番の雨漏り原因となっていたのは「窓やサッシ」の項目でした。窓の周辺でなぜ雨漏りが多く発生するかというと、開口部とは単純に外壁に開けた穴であり、構造的な弱さがあり劣化による内部へのトラブルが発生するスピードが他の部位より早いという点にあります。経年劣化に寄り縮みなどの変化が起きやすいシーリングや窓枠から伸びるひび割れを発見した際には早めに点検や補修工事を行うようにしましょう。
2位:外壁
次に多いのがまたしても屋根ではなく外壁からの雨漏りです。外壁からの雨漏りはクラック(ひび割れ)やサイディング材や外壁と付属部位の目地に用いられるシーリングが原因です。また外壁や屋根の取り合い、入隅や出隅といった角に当たる部分からの雨水の侵入がよく見られました。
3位:笠木
そしてTOP3の最後は笠木でした。笠木とはベランダや屋上の小壁の頂部に用いられる部材のことです。笠木といっても木がむき出しであるわけではなく、板金が巻かれています。
上記写真は屋上からの雨漏りを調査するために行った散水試験の様子ですが、赤線で示した部分が笠木と呼ばれる部位です。一般戸建てのベランダやベルコニーでは手すりの脚部が立ち上げる小壁の頂部がこの笠木と呼ばれるところです。笠木は主に美観と防水のために取り付けられます。
雨漏りの発生は板金や継ぎ目のシーリングの劣化という老朽化だけでなく、雨ざらしになることの多いベランダや屋上では、笠木の継ぎ目に打ち付ける雨や下から吹き上がる雨風による浸水の危機に常にさらされている部位であるという点があります。ベランダやバルコニーは笠木以外にも、防水塗装の劣化や排水のつまりによる浸水被害も考えられます。外壁の塗装と同じく、防水塗装もサイクルに応じて行う必要がある工事です。定期的な検査はもちろんですが、手すりのきしみ、錆が目立つようであれば早急な対応をお勧めします。
TOP3圏外となった屋根
屋根は4位と比率は少ないですが雨漏りが多く発生していることには変わりません。屋根の雨漏りの劣化は防水シートの劣化や板金の不具合から起こるものが多く、谷や段差、トップライトなどの構造が入り組むところで雨漏りの危険性はさらにまします。屋根は屋根材とルーフィングと二重の防水構造を持っていますが、こちらも経年での劣化を起こしてしまいます。また、風の影響を受けやすい屋根では台風などの強風により屋根材とルーフィングが一緒に捲り上がってしまうこともあります。屋根の状況は遠くから見るだけでも異変に気付くことができます。遠目からちらりと強風の後は確認してみるといいかもしれません。ただし、屋根に上っての確認やはしごを使っての確認は重大な事故につながる恐れがありますので、細かく点検する際は必ずお近くのリフォーム専門店へご相談ください。
雨漏りが発生しやすい箇所
以下の図は雨漏りの発生しやすい箇所を示したものです。特に頻出する箇所には黄色く目印を入れています。こう見るとリスクのある所は多く、そもそも住宅の存在にも疑問が出てきますが、ぽたぽたと落ちるしずくが石を穿つように、山の中をめぐる水分が急に岩肌から噴出するように、とにかく水の力はとてつもなく強いのです。雨によって流れた砂や石でできた土壌が生活の礎になっているという人類史の知見にも寄り道すれば、どこのどんな建物に暮らそうと雨の恵みと脅威からは離れることができないという諦めに似た感情にも辿り着くことができます。
片流れの屋根は雨漏りのリスクが多い
近年の住宅に増えている片流れの屋根。片流れの屋根は小屋裏のスペースが取りやすく、狭小地でも屋根が高い方の上部に設置した窓から陽光を取り込むことができるため人気がありました。しかし、経年劣化が進むと雨漏りに悩まされる世帯が増え始め、弊社で行う診断チームも良く片流れの屋根の対応をしています。
なぜ雨漏りが発生しやすい?
片流れ屋根で発生する雨漏りは主に以下の2つを原因とします。
1、片流れ屋根の構造上、棟やケラバなどの端部に雨が当たりやすく、吹き込みや部材の不具合に
よる浸水が発生しやすいという点
2、スタイリッシュでシンプルな外観を求めるデザインが多く、軒の出が少なく窓の庇もないなど
サッシ部が雨水にさらされている点。
また、上記に加えるなら「サイディング外壁」の採用が多く、外壁や屋根材よりも劣化が早いシーリングのメンテナンス時期を見逃してしまっていることも挙げられるでしょう。
上記の表は片流れの棟周辺の構造を簡易的に表したものです。雨の当たりやすい棟周辺に破風などの構造が入り組むことで複雑になっていることが分かります。また、破風から斜めに軒天を通過して壁の取り合いへと雨水が渡っていく流れが図を見るだけで想像することができます。
上記のように軒の出があることで窓に当たる雨水が少ないことが分かります。もちろん角度や風の有無により状況が変わりますがこのように屋根の軒やケラバは外壁に当たる雨から守ってくれる効果があります。さらに加えて庇があると、より窓が守られるためサッシ廻りのリスクを大きく軽減することができます。
調査結果のまとめ
2022年度は台風の本土上陸がすくなく、関東地方も太平洋側を通過したおかげで強風やや豪雨によるトラブルが少なかったため診断数は例年以下となりました。それでも多くの雨漏りが発生し、多くのご依頼がありました。雨漏りのリスクはどんな住宅にも潜んでいます。トラブルを未然に防ぐことは難しいですが、発生後に早急な調査と適切な改修工事を行うことで被害を最小限に抑え、また安心して暮らすことができるようになります。雨漏りかもと思ったら、目を背けずにすぐに対応することが一番の対策といえるかもしれません。
住宅診断ページでは調査の詳細と事例についてごらんいただけます。
https://www.eaglekenso.com/reform/diagnosis/
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